原民喜の作品をいくつかご紹介します。
1.夏の花 2.焔 3.ガリバー旅行記 4.心願の国 5.鎮魂歌 |
6.永遠のみどり 7.苦しく美しき夏 8.秋日記 9.美しき死の岸に 10.三田文学 |
「夏の花」原民喜 著
能楽書林 1949年 刊
原爆被災直後の20年秋から冬にかけ、避難先で死の不安におびえつつ、書きとどめたものといわれる。八月初めの一日亡妻の墓に詣でて名も知れぬ「夏の花」を手向けた作者は、その翌々朝起き脱けのままの姿で原子爆弾の一撃にあう。この作品は、それから丸二日にわたる凄惨な広島の実景と郊外の八幡村へ避難してからの事実を、ときにはカタカナで書きなぐり、時には出来事の前後のつながりも不明瞭なまま挿入されている。一見ルポルタージュ風の冷静な視覚的描写の中に犠牲者に対する作者の哀傷や祈りの念が深くこもっており、読者に清冽な印象と感動を与える。
『夏の花』は、「壊滅の序曲」「廃墟から」とともに単行本に収められ、三部作をなしている。「壊滅の序曲」で描かれる原爆以前の家族らの感情の行き違いは、逼迫した戦況を語る一方、感情など語る余裕もない原爆以後を不気味に照射し、「廃墟から」は終戦を迎えた広島を、おさえた筆致で綴る。
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ギラギラノ破片ヤ
灰白色ノ燃エガラガ
ヒロビロトシタ パノラマノヨウニ
アカクヤケタダレタ ニンゲンノ死体ノキミョウナリズム
スベテアッタコトカ アリエタコトナノカ
パット剥ギトッテシシマッタ アトノセカイ
テンプクシタ電車ノワキノ
馬ノ胴ナンカノ フクラミカタハ
プスプストケムル電線ノニオイ
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