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書評

『日本の優秀小売企業の底力』

公開日:2012年01月13日

『日本の優秀小売企業の底力』矢作 敏行/編著 『日本の優秀小売企業の底力』矢作 敏行/編著

1990年代初めをピークに、日本の高度経済成長を牽引してきた小売業界の元気が低下し始めてから約20年が経過しました。

今後の国内の消費市場を見ても、少子高齢化による人口減少に併せて、15歳以上65歳未満の人口が、これからの50年間で現時点より4割程度減少すると推計されています。消費活動が活発な世代の減少は消費の減少にもつながり、日本経済市場の今後も明るいとは決して言い切れない状態です。

しかし、そんな厳しい状況にあっても、独自の信念を貫き、優良な経営を持続している企業があります。

この本ではスーパー、コンビニエンスストア、ホームセンター、家具専門店、家電量販店、衣料専門店、百貨店といった様々な業態で長期間元気な企業9社をピックアップし、それぞれの企業の歴史や背景を追いながら、市場戦略だけではなく組織能力にもスポットを当て、各企業の持つ「底力」を研究、分析しています。この9社には、広島に本社を置く「イズミ」も含まれています。

元気な企業の「底力」とはどのようなものなのでしょうか。また日本の小売企業に明るい未来はあるのでしょうか。

編著者であり、小売業における経営革新の研究者でもある矢作氏は、日本小売企業の潜在的な組織能力は優れているとしつつ、成熟した市場では自社しか提供できない顧客価値の創造、独自商品の開発や店舗運営の革新をはじめとした新たなサービスやモノを作り出す仕事のやり方が重要であることを述べています。

現在置かれている小売業の状況を確認するとともに、この本で示されている成功事例から経営のヒントを得ることができる1冊です。

『彼女はなぜ「それ」を選ぶのか?―世界で売れる秘密』

公開日:2012年01月12日

『彼女はなぜ「それ」を選ぶのか?―世界で売れる秘密』パコ・アンダーヒル/著 『彼女はなぜ「それ」を選ぶのか?―世界で売れる秘密』パコ・アンダーヒル/著

なでしこジャパンがついに、強豪チームを破り、W杯世界一を果たした。

環境が整っていない中で、サッカーを続けてきた「絶対あきらめない」精神は、どの試合にも、その気迫を感じられた。このなでしこジャパンが象徴するように、近年女性は力強く、自立した存在になり、世界のビジネスや文化にまでも、大きく影響をもたらしている。

そういった10年の流れを汲みながら、この本は、2001年にベストセラーになった「なぜこの店で買ってしまうのか‐ショッピングの科学」に続くパコ・アンダーヒルの新作である。
本書で取り上げられるのは、女性の社会的役割やライフスタイルの変化による、女性が望む条件について、住宅、トイレとお風呂、ネットショッピング、ホテル、ファッションまたフェイスブックやツイッターなどに関わるあらゆるジャンルにおいて、具体的に事例をあげながら検討し、変化や対策を解き明かしている。
読みながら思わず「わかるわかる」と女性として消費者として共感し、またマーケティングの理論としても具体的でわかりやすい。女性が好み重視するのは、清潔であること、調節できること、安全であること、思いやりがあるかということだと、著者は唱えている。

冒頭に、日本の読者へという序文で、今後女性に焦点を合わせることは、おそらく世界のどの国よりも、日本においては重要だと思うと述べているが、女子力という言葉がビジネスの世界でも使われるようになり、昨日の新聞にも女子会で勉強会という記事が載っているのは、まさにそのとおりの現象であろう。
今話題の「もしドラ」も、女子高生がドラッカーを読んでマネジメントし、野球部を甲子園へ連れていくというストーリーであるが、今世界の流れは、彼女たちをマーケティングし、また彼女たちがマネジメントしていく時代なのだろうか。彼女たちが今何を求めていて、どう世界が動いていくのか、ぜひ一読をおすすめしたい。

『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ』

公開日:2012年01月12日

『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ』子安 大輔/著 『ラー油とハイボール―時代の空気は「食」でつかむ』子安 大輔/著

食べるラー油やハイボールはなぜヒットしたのか。

著者の子安氏は飲食店のコンサルティングなどを行っており、飲食業界に深く関わる人物です。
子安氏はこの本で、「食べるラー油」の爆発的ヒットの要因の一つとして、「かける」だけだったラー油を、揚げたたまねぎやニンニクをたくさん加えることで「食べる」ものへ転換した点を紹介しています。
また、「ハイボール」の人気の秘密は、一杯目のビールの後の二杯目の市場に着目したことではないかと述べています。

これら商品の流行の背景には、例えば「ラー油」であれば、「かける」ものから「食べる」ものへというような視点の転換が大きく関わっていると言えます。

ブレーンストーミングの考案者でもあるオズボーンのチェックリスト法にもあるように、「他の使い道がないか」、「応用できないか」、「修正したらどうか」、「拡大したらどうか」などの多くの視点から1つの事象を捉えることは多彩な発想を生みます。
この柔軟な発想によってこれまでの価値観を崩し、新たなモノを生み出すことは、飲食業界に限らず現代のビジネスにおいても必要な販売戦略の手法です。

このほか、本書では「夜に食べる朝ごはん」や「飲み放題はなぜ儲かるのか」などの様々な食の話題についても考察をしています。ヒット商品の裏に潜む消費者の動向や時代が求めているものを捉えつつ、固定観念にとらわれず物事を多角的に見つめることで得られるヒントを、それぞれの持ち場で活用してみませんか。

『人を助けるとはどういうことか』

公開日:2012年01月06日

『人を助けるとはどういうことか』エドガー・H・シャイン/著 『人を助けるとはどういうことか』エドガー・H・シャイン/著

「今、自分に何が出来るだろう?」2011年3月11日未曾有の震災からこの2か月の間、世界中の多くの人がこのことを考えずにはいられなかっただろう。

しかし現実には、人を支援するということは、なかなか簡単ではない。この本は今まで見過ごされてきた「支援学」の入門書であり、支援とは相手の役に立つこと相手にそう思ってもらえる行為である。これをうまくできるようになるには、どんな原理・原則を知る必要があるのか、多数の日常的な例示を活用しながら考え方を整理している。

2010年ビジネス書でも話題になった本である。

成果をあげるチームワークの作り方として、メンバー全員の人間関係を作ることであり、支援関係の状態をつくることであるという。われわれは日々仕事をしていくなかで、チームワークをつくっているが、支援関係がもとになっているとは考えにくい。

私たちが助けてもらうときは、下にいるような気持ちになり、助けてあげるときは、上にいる気持ちに感じることが多い。それは職場でも家庭でも社会関係で常々感じることであり、だから人を単純に助けるということがむずかしいと考える所以である。リーダーに助けられたり、またリーダーを助けたりで、チームワークとして成立し、成果をあげる。

仕事をする上で、チームワークがお互いの支援であるという具合に考え直すだけでも、チームは変わるのではないか。この震災で、人を助けるとは、支援するとはどういうことかと考えさせられたこの機会に、自分の身のまわりの人間関係について考えてみてはどうでしょうか。

『ダメ情報の見分けかた』

公開日:2012年01月06日

『ダメ情報の見分けかた』荻上 チキ/ほか著 『ダメ情報の見分けかた』荻上 チキ/ほか著

日常生活において、情報の重要度や真偽をどのように見極めていますか。

インターネットやテレビの報道など、様々なメディアから多種多様な情報が発信される現代では、チェーンメールやネット上のデマ、根拠のない噂に、時折、翻弄されることがあります。最近では、東日本大震災の発生直後に、実際は送電予定がないのにもかかわらず、中国地方から関東へ送電するための節電を呼びかけるチェーンメールが飛び交うという出来事がありました。

今回ご紹介する本は、このような状況に遭遇した際にどのように対処すればよいのか、また、現代社会に必要なメディア・リテラシーとは何かを説いた本です。

流言やデマに関わることで受ける被害を最小限に留めるには、確かだと思われる情報を得るためのリサーチ力や確からしさを検証する力が必要であること、また確かでない情報が広がらないための環境づくりとして発信力が求められているという現代のメディア・リテラシーの課題をはじめとして、膨大な量の情報から、ダメな情報を振り落とすにはどのような観点で判断すればよいのかなどについて、メディア評論家、経済学者、社会学者の3人が論じています。

ビジネスをはじめ、私達の生活に.情報は必要不可欠です。いかにその情報とうまくつきあうかについて、この本を通して考えてみませんか。

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』

公開日:2011年11月13日

『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』松下 幸之助/述 『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』松下 幸之助/述

皆さんは松下政経塾をご存知でしょうか。その名のとおり、松下電器(現Panasonic)の創業者である故松下幸之助氏が私財を投じて創設した、政財界の指導者を養成するための全寮制の私塾です。本書はこの松下政経塾での松下幸之助氏自身による講話のなかから厳選された、リーダー教育の参考になる48項目が掲載されています。

「自分の境遇を受け入れる」では、松下氏自身が丁稚奉公に出ていた時の経験をこのように話しています。

「向かいの家の坊ちゃんはぼくと同じ年で、中学へ行く。ぼくは中学へ行かずに掃除をしている。それをぼくはつまらんとは思わなかった。当たり前やと。(中略)毎朝むこう三軒両隣の掃除をして、そのあと水をまくというようなことから、商売のコツもわかってくる。それが立派な修行になったわけやな。」

掃除から全てを学ぶという氏の想いは強く、本書でも掃除の重要性が何度か語られます。「『掃除』で政治の要諦をつかむ」では、掃除にまじめに取り組まない塾生がいることに対して、次のように説いています。

「なぜ政経塾で掃除というものをさせるかというと、掃除から政治はいかにあるべきかということまで発想できるからや。(中略)諸君は他の何についてもそういう見方をしないと、非常に浅くなってくる。深いものをくみ取ることができないわけや。」

松下氏の発する言葉の一つ一つが氏の経験に裏打ちされたものだからこそ、激変する現代においても、変わることなく多くの人に支持されているのだと思います。

この6月には続編も発行されたので併せて読んでみてください。混迷の世を生き抜くヒントが見つかるかもしれません。

『ガラパゴス化する日本』

公開日:2010年12月15日

『ガラパゴス化する日本』吉川 尚宏/著 『ガラパゴス化する日本』吉川 尚宏/著

南東太平洋上にあるエクアドル領のガラパゴス諸島には、ガラパゴス・イグアナなど独自進化した草食動物が生息していますが、外来種の攻撃に弱いと言われています。
一方日本では、著者によると、日本企業の生み出す製品が海外では通用しなくなっており、日本の将来を担うはずの若者は海外での経験を敬遠する傾向にあるそうです。

例えば、メールや画像などのコンテンツが充実している日本の携帯電話は技術的に見れば先進国ですが、国内独自の規格に固執した結果、世界の携帯電話端末販売台数において日本企業製品が占める割合は低く、また若者の海外旅行や留学への関心も低下しています。

このような日本企業の内向きの姿勢や、外に出たがらないおとなしい日本人の特性をガラパゴスの動物になぞらえ、「ガラパゴス化」している日本の社会状況に警鐘を鳴らし、日本がグローバル社会の中で生き残っていく方策を説いているのがこの本です。

少子高齢化が進み、人口が減少傾向にある現在の日本で私達が安定した生活を送るためにはどうしたらよいのでしょうか?10年後の日本を想定し、世界に目を向け、雇用など複雑に絡み合う問題を解決することなど具体的な提案が示されています。

日本の現在と今後をマクロ的な視点で捉えるのにおすすめの本です。

『特別講義コミュニケーション学』

公開日:2010年11月17日

『特別講義コミュニケーション学』藤巻 幸夫/著 『特別講義コミュニケーション学』藤巻 幸夫/著

人々の価値観がどんどん多様化してきている現代において、相手としっかりと向き合い、お互いの力をうまくかみ合わせていくためには、コミュニケーションが必要であり、その重要性はどんどん増してきていると著者は語ります。

著者は大学卒業後、伊勢丹に入社。「解放区」「リ・スタイル」「BPQC」など数々の売り場をプロデュースした経歴を持っており、現在は株式会社藤巻兄弟社 代表取締役社長。テレビコメンテーター、講演会講師など幅広い分野でご活躍され、コミュニケーションの達人と呼ばれている方です。

本書は、著者がコミュニケーションをテーマに実体験から学んできたことをまとめたもので、とても分かりやすく、また読みやすく書かれています。

「コミュニケーションとは?」という基本的なところから始まり、「人間関係を築く」というあらゆる場面における一般的なものから、職場で活かせる「プレゼン・交渉する」という章や、部下や後輩との関わり方や怒る技術などについての「教える・導く」という章など、さまざまな場面で役立つコミュニケーションのアドバイスや大事なポイントが提示されています。

ビジネスシーンの人間関係に役立てるためにはもちろんのこと、毎日を楽しく過ごすためにもこの本を読んで日々のコミュニケーションに役立ててみてはいかがでしょうか。

『明日の広告-変化した消費者とコミュニケーションする方法』

公開日:2010年08月20日

『明日の広告-変化した消費者とコミュニケーションする方法』佐藤 尚之/著 『明日の広告-変化した消費者とコミュニケーションする方法』佐藤 尚之/著

インターネット上のコミュニケーション・ツール「twitter(ツイッター)」が話題となっています。

ツイッターとは、登録しているユーザーが、自らの周りで起こる様々な出来事を140文字以内で表現して発信(ツイッター内では投稿することを「つぶやく」と言う)するというもの。
例えば、ある商品に対してつぶやいた場合、そのつぶやきは波紋のように広がり、多くの人が知るところとなります。
このようにインターネット上での個人の評価がリアルな情報として届けられるため、ビジネスの面でもクチコミ宣伝の一助を担うとして注目されています。

では、本当にインターネット上のクチコミは、広告として有効なのでしょうか?
また、伝播力の高いインターネットに、広告は頼っていいのでしょうか?

CMプランナーやウェブ・プランナーなどを経験し、長年広告業界に携わってきた筆者は、変化する消費者の動向を肌で感じつつ、その消費者に有益な情報を伝えるより良い方法をラブレターになぞらえて本書の中で説明しています。
渡す相手をしっかり観察し、心震わすラブレターを書き、最適なタイミングと場所を用意して想いを届ける。

商品に込められた想いを届ける広告の在り方は、届ける相手のことを考えれば自ずと見えてくるものなのかもしれません。
また、この視点は広告だけではなく、その他の業界にも通用するものでもある気がします。

「スラムダンク一億冊感謝キャンペーン」を始めとした、筆者が関わった仕事の事例も豊富です。
あなたが温めている想いをどのように伝えるか。この本を手にしてヒントを得てみませんか。

『NASAより宇宙に近い町工場-僕らのロケットが飛んだ』

公開日:2010年04月13日

『NASAより宇宙に近い町工場-僕らのロケットが飛んだ』植松 努/著 『NASAより宇宙に近い町工場-僕らのロケットが飛んだ』植松 努/著

今回ご紹介するのは、本のタイトルに魅かれ、思わず手に取ったこの本です。

著者は、北海道の「もうすぐ潰れそうな町」といわれている赤平で「植松電気」というリサイクルに使うパワーショベルにつけるマグネットを製造する会社を経営しています。実は、その会社ではもう一つ行っている仕事があります。「宇宙開発」です。ロケットや人工衛星も作り、世界に三ヶ所しかない無重力実験施設もあるといいます。

なぜ、町工場で宇宙開発なのか。お金儲けではない。国からの補助金ももらってない。全部自腹で借金もしている。なぜ?それはビジネスよりもっと大切なこと、多くの人が夢を諦めてしまう時に使う「どうせ無理」という言葉をこの世からなくしたいという著者の強い思いがあるのです。

今の世の中、学校の成績や学歴だけで「夢をあきらめろ」と言われてしまうことも多く、子どもたちの可能性を潰してしまっています。著者自身も「この大学では、飛行機を作る仕事は無理だ」と断言されてしまいますが、諦めずに勉強を続けた結果、飛行機を作る仕事に就くことができました。「どうせ無理」と考えず「あきらめず」「工夫をし続ければ」「夢はかなう」ということを実体験をもとに教えてくれる内容となっています。

『どんな夢も、「どうせ無理だ」ではなくて、「だったら、こうしてみたら」といったら必ずかないます。』

と著者は語ります。「不景気だから」「どうせ○○だからできない」とか考えてしまっている人はぜひ、この本を読んでみて下さい。「こうしてみよう!」と前向きに考える元気がきっとたくさんもらえるはずです。ビジネスマンだけではなく、子どもにもぜひ読んでもらいたいおススメの本です。