公開日:2014年10月15日
「すべての悩みは『対人関係』の悩みである。」
私たちは、家庭でも、学校でも、職場でも、常に他者を意識し、自分を他者に認めさせたいと思いながら生きているのかもしれません。だからこそいろいろな悩みが生じるのです。この世で一人っきりであれば、悩む必要はない?ただ、そんなことは不可能です。
この本は、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの心理学を、悩み多き「青年」と、「世界はシンプルである」と説く「哲人」の対話形式にまとめたものです。物語を読み進めるうちにアドラーの思想が自然と心に落ちてきます。
私も青年と同じく、誰からも嫌われたくないが故に、他者から自分に期待されている役割は何なのかということばかりに気をとられ、それに合わせて生きてきたような気がします。他者の反応に一喜一憂の日々。
それを哲人に「ほんとうの自分を捨てて、他者の人生を生きることになる」、「他者もまたあなたの期待を満たすために生きているのではない」、「相手が自分の思うとおりに動いてくれなくても、怒ってはいけません。それが当たり前なのです。」と説かれ、返す言葉もありませんでした。
「大切なのはなにが与えられているかではなく、与えられたものをどう使うか。」「あなたにできるのは『自分の信じる最善の道を選ぶこと』、それだけです。その選択について他者がどのような評価を下すのか、これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない話です。」
そう考えれば、他者にどう思われるかをあれこれ心配するのは無意味なことであり、自分の信念のままに生きればよいというシンプルな構図が目の前に開けます。
青年が哲人との対話でたどり着いた答えは非常にシンプルです。
「ただし、実践するのは難しそう。」そう思うのは私にまだ「勇気」が足りないからかもしれません。
「幸せになる勇気」は「嫌われる勇気」。
アドラー心理学の入門書として最適な一冊です。
公開日:2014年09月15日
書名であり社名でもある「和える」とはどういった意味からきているのでしょうか?
著者は「和える」とは「日本の古き良き先人の知恵と、今を生きる私達の感性を和える」という意味だと説明しています。焼き物の割れにくさや本藍染の抗菌作用などの日本の伝統工芸品のすばらしさを発見し、子どものころから伝統工芸品を使ってもらい、日本の伝統を21世紀の子どもたちへ伝えていきたいという強い想いが社名「株式会社和える」の由来になっています。
創業のきっかけは高校まで茶華道部に所属して伝統工芸品に囲まれて過ごす中で興味を持ち、大学入学後には、日本の伝統工芸品などの情報発信の仕事をするようになったことからです。そして伝統工芸産業の職人との出会いなどが更に創業に結びついていきます。伝統工芸品のすぐれたところを取り出し、それを使ってもらい伝統産業そのものをアピールしていくことで、職人の仕事も継続的に支えることにつながっていけると考えています。そして日本の伝統工芸品を未来につなげていくことを期待し、ホンモノを子どもたちに伝えるという意味で、「伝統産業×赤ちゃん・子ども」というこれまであまりビジネスとして成り立っていないコンビネーションに可能性を見つけ、日本の伝統産業で0から6歳の未就学児向けのブランドを立ち上げます。
この著者がすごいのは、まずその行動力です。たとえば大学入学後すぐに、受験したAO入試の体験を、本にするために企画書を出版社に持ち込み、伝統産業のことを知るため職人を現地に訪ねるときも、企画書を出版社に持ち込み、出版を実現させていきます。また、伝統産業の職人の現場に出向いて、自分が何をやりたいかを伝え、ロゴを作り、あるいは、「こぼしにくいコップ」などの商品を製作していくなかで、人をどんどん巻き込み、コミュニケーションを繰り返し行うことで想いを形にしています。この著書には、自分が思いついたことを実行できるかを考え、企画書をつくり提案して、困難にぶつかりながらも、創業に至った具体的な行動や感じたことなどが詳細に書いてあります。こうした著者が想い続け行動し続けるストーリーは、創業について参考になるだけでなく、読んだ人が自分も常識にとらわれずに、思いついたことを行動に起こしてみようと思える一冊になっています。
ちなみに、著者自身は「和える」を立ち上げる前にビジネスとしての評価を受けるために、数々のビジネスプラングランプリに参加してブラッシュアップした経験の持ち主ですが、それが評価され、当館が開催している「高校生ビジネスプラングランプリ ビジネスプラン作成講座」で共催している日本政策金融公庫が主催した「第1回高校生ビジネスプラングランプリ」の審査員に選出されています。
公開日:2014年08月15日
著者の佐藤オオキ氏(表紙写真)は、1977年カナダで生まれ、早稲田大学理工学部建築学科を卒業し、同大学大学院修了後の2002年にデザインオフィスnendoを設立、その代表を務めています。国内外の企業を相手に250を超えるプロジェクトを抱え、建築、インテリア、家電製品、雑貨、パッケージなどのグラフィックデザインまで、ジャンルを問わず数々のアイデアを出し、今最も世界が注目しているデザイナーの一人です。
「nendo」の由来はもちろん「粘土」で、「形や色を無限に変える粘土さながら、(卒業旅行の)ミラノで感じた自由な発想と創作活動を実現したいという想いが込められている。」のだそうです。
この本は、副題が「佐藤オオキ nendo 10の思考法と行動術」とあるように、第1章「nendoの思考法」では、①「面」で考える ② 一歩「下がる」 ③「違和感」を生む ④ 均衡を「崩す」 ⑤ 見せたいものは「隠す」 ⑥「ゆるめ」につくる ⑦ とにかく「集める」⑧「休み時間」に休ませない ⑨「他人丼」を見つける ⑩ そこにあるものを「使いまわす」をタイトルに、それぞれ具体例を挙げながら書かれています。
例として、消臭スプレーのモデルチェンジ(①)など馴染みのあるものから、海外ブランドのショーウインドーディスプレイ(③)や、ニューヨーク近代美術館などに収蔵されている作品(⑥)、さらに伝統工芸とのコラボレーション(⑩)など数多く挙げられており、nendoの柔軟なアイデアがどのようにして生まれたのかがわかりやすく紹介されています。
第2章「nendoの行動術」では、① 状況を「耕す」 ② クライアントと「育てる」 ③ アイデアを「収穫する」とし、基本的な考え方や取り組み方について書かれています。
佐藤オオキ氏は「はじめに」に、「デザインとは問題解決のための「新しい道」を見付ける作業」「こういった「新しい道」を見付けることによって、クライアントに価値を提供するのがデザイナーの役割なのです。」と書いています。
nendoがクライアントとプロジェクトを完成させるとき、それは決して相手方を考えずにデザインを押しつけるのではなく、同じ方向性と価値観を持って作り上げていき、最終的にクライアントが望んだ以上のものを提供していきます。彼は、「(商品デザインによる)短期的な利益以上に重要なのは、企業や商品のブランド価値を高めたり、(略)社内の意識改革や業界全体の活性化がなされることです。」とも述べています。つまり、nendoのデザインが始まりとなり、企業がプロジェクト完成に向けて新たなスタートを切っているのです。紹介されたプロジェクトの中には、なぜnendoに依頼し、そのアイデアによってどのような変化がもたらされたか経営者のコメントも載せられており、興味深く読むことができます。
「何かいいアイデアはない?」「新しいアイデアが浮かばない」この会話は職場でよく耳にします。しかしながら、アイデアは探してもなかなか見つかるものでもありません。そんなときは、ぜひこの本を開いてみてください。何かきっかけが見つかるかもしれません。
公開日:2014年07月15日
「1分50円」。
この数字は会議時間中にかかる一人当たりのコストです。
書道家、武田双雲の力強い題字からも思いを受け取ることができるのですが、著者はこの本で、「会議の『数』と『時間』と『参加者』を2分の1に削減し、『会議コスト』を90%削減」する「脱会議」を提唱しています。
会議のために資料を作り、会議のために打ち合わせをして、会議のために根回しをする。冒頭で紹介した会議中の人件費だけでなく、その準備にも費用はかかっており、そのコストのツケは顧客が支払っているのです。ただ会議があるから参加する「会議ペット」として、会議のついでに営業をしていては本末転倒。
これは著者自身が「会議中毒」と言っていいほどの職場に身を置き、上司に言われるがままに会議漬けの日々を送り、組織の成果を実感することもなく、喪失感と空白感の日々を過ごした経験と、コンサルタントとして多くの企業の会議を見てきた実績から得たものであり、この本を読んでいると、無駄な会議を削減することが企業にとってどれだけ有益かということがストレートに伝わってきます。
もちろん会議がすべて不必要なわけではありません。既存の会議をPDCAサイクルに基づき分類し、整理する方法や、その目的にふさわしい効果的な会議の開催方法、会議を減らすために必要な周りとの調整方法、また、会議が減った後、その空いた時間で何をすべきなのかということもわかりやすく記されています。
少子高齢化が進み、現場で働く若い労働力が減少していく昨今、ミドルマネジメント層が会議だけをしていればすむ時代は終わりました。
「脱会議」をすすめ、空いた時間を現場で過ごし、お客様のために使う、部下のために使う。
会議のことだけでなく、全ての仕事との向き合い方を考えるきっかけとなる一冊です。
公開日:2014年06月15日
この本の著者は通訳者です。
ご存じのように、通訳という仕事は、異なる言語を話す人たちの間に立って、会話を翻訳して相手に伝えることです。著者は、日本における会議通訳者の草分け的存在であり、先進国首脳会議をはじめとする数々の国際会議やシンポジウムの同時通訳をされてきました。
この本は、彼女が通訳者としてのさまざまな現場に立ち会う中で考えてきた「言葉によるコミュニケーションとは何か」、「発言すると伝えるとの違いは何か」などについて具体例を挙げて書かれたものです。
2020年の東京五輪開催に向けての素晴らしいスピーチで記憶に新しい太田雄貴選手ですが、今回、彼の言葉が多くの人の胸を打ったのは太田選手の英語力だけではなく、「自分の意見を聞いている相手に理解させ、賛同してもらうという『伝える力』だった」と紹介しています。
著者によると、この「伝える力」とは、「『誰かに伝えたい』と思う内容(コンテンツ)を持っているか」、「それを伝える熱意があるか」、「話を相手にわかりやすくするための論理性・構成力があるか」の3点だということです。
プロの通訳者として、海外の国家元首や日本の総理大臣、またはサッカーのデビット・ベッカムやホーキング博士等の通訳を行った時のエピソードも交えながらの文章はとても読みやすく、単に言ったことをそのまま伝えるだけではなく、通訳を通して聞く人たちに「語られている世界の情景が拡がるぐらい豊かな言葉」に翻訳して伝えたいという著者の思いが真摯に伝わってきます。
今日ではメールやSNSなどの普及によって、直接相手と対峙してコミュニケーションするときの「伝える力」が衰えていると言われていますが、ビジネスにおいても、きちんと相手に思いを伝えることから、仕事が始まるのではないかと思います。「どう話せば相手に伝わるか」という時に、是非参考にしていただきたい1冊です。
公開日:2014年05月15日
この本は、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹氏(かなりの読書家で知られている)が経済学者を先生に迎え、「幸福」「結婚」「格差」などをテーマに、経済学をわかりやすく学ぶテレビ番組「オイコノミア」の2012年4月から2013年2月までの放送をまとめたものです。
「オイコノミア」とは、古代ギリシャ語で「家」という意味の「オイコス」と「法律」という意味の「ノモス」から成り、エコノミクスの語源となった言葉です。「経済学」は難しい学問という印象を受けますが、この本では、「幸福を経済学でひもとくと」「スポーツは経済学で成り立つ!?」「経済学で賢い人生設計をする」など身近なテーマを経済学の視点でとらえ、実はビジネス以外の様々な場面で経済学が活用できると書かれています。
ここで質問。「夏休みの宿題はいつやるタイプ?先にやる?後にやる?」
夏休みの宿題と貯蓄行動には深い関係があり、宿題を後回しにした人は貯蓄しにくいという調査結果が出ているそうです。目先の楽しみを我慢できない人は誘惑に負けてしまって貯蓄できないというのです(この傾向を経済学では「現在バイアス」と呼ぶ)。
では、もらうとしたら「今日の1万円と、1週間後の1万100円、どちらがいいですか?」「1年後の1万円と1年と1週間後の1万100円、どちらがいいですか?」
経済学者で大阪大学の大竹文雄特別教授は、前者の質問では今日の1万円、後者の質問では1万100円を選ぶ人が多いと言っています。そして、後者の質問で「1年と1週間後の1万100円を選んだ人の多くが、1年経過してあと1週間となったときに「やっぱり1万円ください」と意思決定を変更することを意味する」のだそうです(これを経済学では「時間非整合」と呼ぶ)。この「現在バイアス」、「時間非整合」を考慮すると、「遠い将来の貯蓄目標を達成したいなら天引き貯蓄をするなど工夫が必要」とアドバイスしています。
この他にも、使っている製品やサービスの乗り換えが面倒に感じるのはなぜか、商品の価格の決まり方、恋愛や結婚を経済学で解剖すると?給料はどうやって決まる? などについて、経済学の観点からわかりやすく解説しています。
又吉氏はまえがきで、経済学は人生の「危険な場所や迷いやすい場所を教えてくれる地図になる」そして「人間の行動を観察し、再考し、新たな方法を生み出し続ける『経済学』は、人類の地図や護身術のようで、とても頼もしく思える」と述べています。ぜひこの本を読んで、経済学を身近に感じてみませんか。人生設計やビジネスのヒントが見つかるかもしれません。
公開日:2014年04月29日
<獺祭>(だっさい)
このお酒の名前を皆さん、ご存じでしょうか。
低迷している日本酒業界で、出荷数量1万1400石(一升瓶で140万本)、純米大吟醸という酒別で全国トップというすごいお酒です。2000年からは海外展開も始め、すでに約20ヶ国で販売されています。SFアニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』で主要人物が愛飲していることでも話題になりました。
このお酒を造っている旭酒造は、山口県の山奥の小さな酒蔵です。そしてこの山奥の小さな酒蔵での第一歩は、最初から今のように立派なものではなく、生きるか死ぬかというどん底だったと、本書の著者である旭酒造代表取締役社長の桜井博志氏は語っています。
旭酒造の三代目で長男の著者は、父親から勘当され、日本酒から離れていたそうですが、父親の急逝により酒蔵を継ぐことになりました。その当時、旭酒蔵は山口県岩国市の中で、しんがりの4番手メーカー。日本酒市場の縮小に先行して売り上げは急減、「ロング倒産状態」と揶揄され、当時は圧倒的な負け組でした。自分の死亡保険金をそろばんで弾くほど追いつめられ、ふたりの子どもの寝顔を見ては、将来が恐ろしく、眠れぬ日々が続きました。しかし、背水の陣で何もかも変え、やれることをやってみようと決めます。小さな酒蔵を強みにするために、小規模な仕込みでないと造れない、しかも少量ずつでも愛され続ける純米大吟醸に絞ります。そして地元で勝てないなら、遠くの大きな市場である東京へ、と進出していきます。
いかにして目の前の危機を切り抜けるかという連続しかなく、幾多の困難が待ち受けていたそうです。
十数年後、東京進出も始め、やっとひと息ついた頃、夏場の仕事のために手を出した地ビールの新事業に失敗してしまい、「どうやら旭酒造はつぶれそうだ」と噂を聞きつけた杜氏たちが他の酒蔵へ移ってしまうという大事件が起こりました。悩んだ末、思い切って杜氏制を廃止して、なんと残っていた製造経験ゼロの若手社員4人とともに、自分たちで酒造りを始めたというから驚きです。
また、日本酒業界の常識にとらわれない酒の造り方「四季醸造」なども構築していきます。これは、お酒は冬場にしか造れないイメージがありますが、その常識を覆し、年間を通じて酒を造る方式です。誰もやったことのない、慣習や伝統を壊すことも選択し、批判も受けつつ前に進んでいきました。
どんなに困難が待ち受けても、そこにあった唯一の思いは、ただひとつ。
「ああ、美味しい!」と言っていただける酒を造ることだったそうです。
これだけは譲れない唯一の財産が、そのひと言でした。
本書を読んでいると、どんな困難にあっても「徹底的に『美味しいお酒』を造りたい」という強い思い、熱意が伝わってきます。
日本酒業界の方や、海外進出を目指す地方企業の方などはもちろんのこと、一般ビジネスマン、そして日本酒好きの方にもオススメの本です。本書を読むと、大事なことは守りつつも、変わることを恐れずどんな逆境にもあきらめず立ち向かう勇気がもらえることと思います。さまざまなことが始まる新生活にぜひ、読んでみていただければと思います。
公開日:2012年01月13日
スマートフォン、電子書籍の登場やツイッター、フェイスブックなどのソーシャル・ネットワークが活発に利用されるようになった現在、ビジネス書の読書方法にも変化が起きているようです。
私達は日常生活において必要な情報を、様々な媒体から入手しています。昨今はテレビ、新聞、雑誌、本に加えて、インターネットから得られる情報量がめざましく増え、多くの情報を吟味し、自分に必要な情報をどのように取得し、活かすかという情報力が問われるようになりました。
この本は、「本を読む」という行為について、効率よく多読するためにいかに読み、本から得た情報をいかにストックし、また必要な時に手間をかけずにいかに取り出すかを解説しています。そして、その情報を自ら発信することで得られる良いアイデアをフィードバックする方法も提案しています。
例えば、読書の際に琴線に触れた言葉や文章をメモする時、これまでは紙に書くことが常であったでしょう。しかし、現在はインターネット上のメモ帳とも言えるソフトを使えば簡単に記録でき、また、ジャンルや内容に関するキーワードを付しておけば必要な時に検索をして抽出することも容易です。また、インターネット上のサイトに記録しているため、スマートフォンからもパソコンからもアクセスができ、自宅だけでなく外出先でもその内容を確認できます。
ビジネスにおいてアドバンテージをとるためには、情報力は必要不可欠です。また、情報を得るためには、日々進化するテクノロジーやツールを学ぶことも欠かせません。
この本に書かれていることを全て実行することは難しいかもしれませんが、効率的な情報収集のためにこの本を読み、できることから実践してみませんか。
公開日:2012年01月13日
企業をはじめとした、あらゆる組織の経営に必要なものは何なのか。
その疑問に対する答えへの道筋を示してくれるのがこの本です。
著者の一人であるハワード・シュルツは、当初コーヒー豆の販売のみを行う小さな会社であったスターバックスを世界的な企業にした人物であり、現在のCEOでもあります。一度はCEOを引退したものの同社の業績悪化に伴い、2008年にCEOとして復帰しました。
そのCEOへの復帰から、スターバックスが存亡の危機を脱するまでの2年間の奮闘ぶりがこの本で述べられています。そしてそこには経営に関する重要なエッセンスが散りばめられています。
例えば、優良な経営を行うには戦略やイノベーションが欠かせませんが、ハワード・シュルツはそれだけではなく、経営には中核となる理念が必要であると考えています。
彼の求めるスターバックス像は単なるコーヒーを提供する店ではなく、最高のコーヒーを提供することで人や地域コミュニティーとつながりを持ち、第3の場所として各々が素敵な体験をする場所であることです。
立て直しを迫られた厳しい2年間に様々な問題に直面し、対処する中でも、この理念はいつも彼の中心にあり続けました。
名経営者と言われる人々は、経営に関して揺るぎない信念を持っています。それは成功を手に入れ、また成功を持続させるために必要なことかもしれません。また、様々な組織で活躍する人々にとっても、そのような信念を持つことは必要なことかもしれません。
この他にもリーダーに求められる能力など、参考になる事柄が多く書かれています。未来へ向かって進化し続けようと考えている人を始めとして、多くの方に読んでいただきたい1冊です。
公開日:2012年01月13日
先日広島市立図書館で、起業を目指す人たちの講座『創業アカデミー』を開催いたしました。これはビジネス支援の一環として中小企業支援センターと共催で実施しているセミナーです。
参加者の皆さんは起業という夢をより明確にし、最初の一歩を踏み出されたのではないでしょうか。
この本は、その最初の一歩のように来るべき「勝負どころ」をつかみ、近い将来飛躍できる人になるために、どのように準備して、実践していくかがキーポイントとなっています。この「勝負どころ」はいつ訪れるかわからない、チャンスが目の前に来た時に、それに気がつき、おもいっきり跳ぶことができる人になれるようにと唱えています。
この著者は東大出身でハーバード経営大学院の日本人4人目のベイカー・スカラー(成績優秀者5%表彰)として終了、帰国してライフネット生命保険の設立に参画して副社長になり、世界経済フォーラムの「ヤンググローバルリーダーズ2010」に選出されるなど、華麗なる経歴を持っています。興味深く読んでみると、意外にも内容は、新人もベテランも再認識するような仕事上の基本や指針です。
仕事の大原則は次の3つ、「頼まれたことは、必ずやりきる」「50点で構わないから早く出せ」「つまらない仕事はない」とし、これを絶対死守することで、チャンスが到来し、そのチャンスを一つずつものにしていくことで、仕事がよりダイナミックに進化して面白くなっていくと提言しています。
なにがチャンスに結びついていったのかという点では、「徹底度」「スピード」「視点」に絞り込んで実践したことではないかと思います。またそのための、具体的なアドバイスが書かれており、何にポイントをおいたらいいのかを、明確で実行しやすく紹介しています。
おもしろかったのは、おわりの章で、著者にテレビ出演の依頼がきて、本番までの経緯が描かれていますが、この機会を「勝負どころ」ととらえ、まさに総力戦でそのチャンスをとらえるために準備を完璧にしようとする姿は、目を見張るものがあります。
日頃からひとつひとつ丁寧な準備を心掛け、すこしだけ行動を変えてみたら、見える世界も変わってくる、この本を読むだけでも一つの準備となるかもしれません。チャンスの到来を待って、ぜひ一読をされたらいかがでしょうか。