公開日:2023年03月15日
「なぜ、あの店は売れているのか」「なぜ、あの店は裏通りにあるのに潰れないのか」。それは、綿密な調査・計画に基づいた立地戦略があるから。
「街中、戦略だらけ」と言う著者の榎本篤史氏は、20年以上にわたり数多くの企業や経営者から依頼を受け、立地調査に携わってきたコンサルタント会社の社長です。
これまでの経験から、コンビニエンスストア、大手飲食チェーン店などをはじめ、様々な業種や業態の店舗開発における立地戦略についてわかりやすく解説しています。
そして、売上予測とビジネスモデルの選択にも立地が大きく関係しており、出店で失敗しないためには街の特性をよく知る必要があると説明します。
出店を考えている経営者や店舗開発担当者にとって、著者の言う「いい場所にあるいい店」になるヒントが満載なのはもちろんのこと、普段何気なく通っている道でも戦略という視点から街を眺めることで新たな見え方を体感できる、そんな1冊です。
公開日:2023年02月15日
1972年、広島市中区紙屋町に中国・四国最大規模のショッピングモールがオープンしました。50年の節目に当たり同店が行ったみんなの「サンモールの想いで」を募集して文庫本をつくるというプロジェクトが形になりました。
本には応募のうち入選した54作品が掲載されています。サンモールが「大切な場所」で、お気に入りの店の様子や商品との出合い、一緒に出掛けた家族や青春を共にした仲間への思いなどが語られています。その頃の自分を思い出し、共感する方も多いでしょう。
サンモールの歴史が分かる「サンモールクロニクル」の章では、インディーズファッションコンテスト、バンドコンテストに代表されるような数々のイベントが関係者のコメントとともに紹介され、ファッションや音楽、アートなどの発信拠点、さらには屋上ブルーベリー園という新たな集いの場となっていることがわかります。
爆心地に近く壊滅的な被害を受けた場所に生まれた「広極(ひろごく)商店街」が共同ビル構想を掲げショッピングセンターへと転身した街の再開発の取り組み、「ヤングマインド」をコンセプトとした経営戦略、そして「お客さんと一緒に」というスタンスなどから、広島の街を元気にするための視点を見つけることができるのではないのでしょうか。
公開日:2023年01月15日
海外旅行とホテルの業界誌紙のフリーランス記者をしていた著者にとって、民泊は取材対象でしかありませんでした。しかし2018年秋に設計士から、物置と化していた実家の離れが「次の夏を過ぎればシロアリで廃屋になる」と宣告され、離れを改装し民泊として開業することを決意しました。
その後コロナ禍に見舞われ廃業する民泊が多い中で、著者の民泊はV字回復を見せます。その成功の大きな要因は、「手間はかかっても、アイディアと工夫を駆使して、唯一無二の価値あるものを提供し、新たな顧客を開拓する、新しい宿のかたちとしての民泊」を目指すという戦略でした。
本書は体験記としてまとめられており、家主非住居型(家主は不在で、民泊の運営を住宅宿泊管理業者に委託する方法)の民泊をオープンするための手続き、上質で居心地のよい宿への改装、ゲストやスタッフとオンライン上でつながる運営方法などが詳細に書かれています。成功した事例だけではなく、うまくいかなかった事例も紹介されており、民泊運営のノウハウを知ることができる一冊です。
公開日:2022年12月15日
「シェアリングエコノミー」「ソーシャルビジネス」「デザイン経営」は、今日のビジネスで注目されるキーワードですが、400年も前の江戸時代にはすでに実践されていたとすれば驚きではないでしょうか。本書に取り上げられている、江戸時代のビジネス戦略からいくつか紹介しましょう。
三井高利は、呉服は掛け売りが一般的だった江戸で現金正価販売をして成功を収めました。他にも、ロゴマークが大きく入った傘の無料貸出によるPR、移転オープンの際のチラシを使った大々的な広告など様々な戦略を打ち出し、経営学者のドラッカーに「三井家の人間によってマーケティングは発明された」と言われています。
豊島屋十右衛門は、不景気の中、酒の「原価販売」で店を繁盛させました。この「原価販売」は大量注文で仕入れ値を下げ、空になった酒樽を仕入れ値の1割程度で売ることによって成り立っていました。他店の「原価」が豊島屋にとっては利益の出る値段だったという訳です。
他にも大丸、山本山、にんべんなど創業300年以上の老舗や蔦屋重三郎、紀伊国屋文左衛門といった商人の、今も最先端な50のビジネス戦略が、イラストとともに分かりやすく紹介されています。顧客のニーズを読み、前例にとらわれない戦略は、商売の本質は不変であることを教えてくれます。「温故知新」という言葉がありますが、江戸時代の商人たちから新しいビジネスのヒントが得られるのではないでしょうか。
公開日:2022年11月15日
新型コロナウイルス感染症の流行が始まって約2年半。
この間に働き方にも大きな変化があり、今やリモートワークやオンライン会議の利用は、フルリモートで働く人だけでなく、様々な職場や場面で見られるようになっています。
本書では、このような働き方の中で生じる疲労やストレスの原因を探り、それを乗り越えるための「休み方」が紹介されています。
例えば、デジタルワークによる目の疲れに対処するための、20分おきに20秒の休息、20フィート(約6メートル)離れたものを見る、「20・20・20」の法則が紹介されています。パソコンやスマートフォンなどを見る時間が増えている現代では、誰にでも参考になる休息方法の一つではないでしょうか。
タイトルにリモートとありますが、睡眠習慣や体内リズムを整える方法、SNSの利用方法など、誰もがちょっとしたことで、心身を整える方法が紹介されています。
気になる項目だけを読むこともできるので、今抱えている不安や不調の対処方法、また普段の生活を見直すきっかけが見つかるかもしれません。
年末に向けて忙しくなる時期、上手な「休み方」を知り、新しい年に向けて心身を整えてみませんか。
公開日:2022年10月15日
ゴールドマン・サックスでトレーディングの仕事をしていた金融のエキスパートとも言うべき著者がこの本を書いたきっかけは、経済に関する2つの「謎」との出会いだそうです。
1つは「政府の借金の謎」、もう1つは「ざるそばの謎」。
この2つの謎を解き明かすために、お金とは何か、借金とは何かをとことん考え、経済を突き詰めて考えた先に見えてきたものは、お金ではなく「人」でした。経済の目的は「お金を増やすこと」と考えていると、お金を奪い合うために働くことになりかねません。自分たちが働くことでモノを作り出し、その効用で誰かの生活を豊かにしている、つまり誰が働いて誰が幸せになるのかを考えることで、経済の本質はシンプルで直感的に捉えることができると述べます。
円安ドル高や物価高など、新聞やテレビなどで報道される金融や経済の問題は、私たちの生活に大なり小なり影響があるにも関わらず、専門用語が多く難解だと敬遠しがちではありませんか。経済について考えるきっかけとして、この本を読んでみてください。
公開日:2022年09月15日
「瀬戸内デザイン会議」は、デザイナーの原研哉氏などが主催し、瀬戸内エリアに限らず日本の新次元の観光ヴィジョンについて話し合われています。
第1回の会議には実業家や編集者、建築家、現代美術作家など様々な領域で未来を見据えている27人が集結。メンバーの一人、株式会社広島マツダ代表取締役兼CEOの松田哲也氏が取得した宮島の旅館の再生というテーマを軸に、レクチャーやセッション、プレゼンテーションが行われました。
この本は、その会議に参加しているように読み進められる構成になっています。示唆に富む数々の発言の中で、今後インバウンドが回復するという予測のもとでは、関西国際空港を使う外国人観光客の行動分析や海外での建築による街おこしの紹介などは大変参考になります。また、嬉野のお茶や四万十の栗などの事例に代表される「土地に根ざす」という考え方や環境に負荷をかけない観光という視点は大切にしていきたいものです。
今後の観光産業発展の道筋を示す本書は、組織や産業分野の枠を超えた交流や対話の価値を知ることができる一冊ともなっています。
公開日:2022年08月16日
本書は、「知識と自由な思考は対立し、互いを圧迫するのではないか」と考える著者の、課題や問題にしばられることのない自由思考の軌跡を収めたエッセイです。
第一~第三人称までの人々に対して、劇の観客のような別次元の視点を持つ「第四人称」、知識と経験に創造的な思考を加えることで新たな価値を生み出す「触媒思考」など、著者独自の思考が6つのテーマで語られています。グローバル社会での外国との付き合い方、選挙での有権者の判断力、川柳や俳句の奥行のある世界、日本語の曖昧性など著者の自由な思考をたどっていくことが、「考えるとはどういうことか」という問いへの答えになるでしょう。
今日では、スマートフォンで検索すればいろいろな知識が簡単に手に入る一方で、情報過多による脳過労や思考力の低下などの問題が指摘されています。10年前に出版された書籍ですが、著者が言う「整理された頭を自由に働かせる思考」はますます重要になっているのではないでしょうか。
公開日:2022年07月15日
本書は、ビジネスパーソン向けに、顔認証システムの仕組みや利用分野、今後の展望を分かりやすく解説しています。4章構成でそれぞれが独立した内容になっており、興味のあるところから読むことができます。
顔認証を使ったビジネスに興味があるという方は、第4章から読んでみてはいかがでしょうか。空港での手続きや観光地での料金の支払いを顔認証で済ませる社会実装事例や、がんの早期発見など医療現場での応用例などが紹介され、ビジネスにどう活用できるかが分かります。
第1章では情報としての顔の特徴とその認知・認証について、第2章ではAIによる顔認証の仕組みが述べられています。なるべく数式を使用せず説明しているため正確ではない部分があるそうですが、コンピュータに詳しくない方でも理解できるよう書かれています。
第3章では、経営者やマネジメント層、技術者の方への「モノづくり」のヒントとして、企業の一員である著者の研究過程が語られています。研究を引き継いだ当時、研究チームは社内では日の当たらない存在で、開発した顔認証技術はエラー率が30%になるケースもあり、チーム存続の危機まで状況が悪化。そこから一念発起して世界一の評価を獲得し、さらに顔認証技術の分野で常に世界をリードする存在となった現在まで、どのように取り組んできたかが分かります。また、役員から「トップになってどういう意味があるの?」と問いかけられたことなど、企業技術者として自分の研究の社会的価値を考えることや人に伝えることの重要性を感じたエピソードも紹介されています。
公開日:2022年06月15日
会議やプロジェクトなどを効率的にまた円滑に進めることは大切な事です。そしてそれらを進めていくためには、中心的な役割を担う人「ファシリテーター」が必要になります。
本書では、押さえておくべきファシリテーションの基本技術と合わせて、会議をゴールに導き参加者を満足させる「ちゃんとうまいファシリテーター」になるための2つのセンスと3つのスタンスが紹介されています。
例えば求められるセンスの一つとして「目利き」があり、ファシリテーターは「場」「話」「意図」「感情」の目利きであることが重要であると言い、それぞれのポイントや「目利き」のセンスを磨くためにできる日ごろの心がけが紹介されています。そして、テクニックに走らないために、観察し、解釈し、そして行動するための思考モデルも紹介されています。
また、オンライン会議におけるファシリテーションについても触れられています。
本書を読むことで、今の自分の物事の見方や考え方を振り返ることもでき、新たな気付きと発見に繋がるのではないでしょうか。また「センス」と「スタンス」を身につけることは、コミュニケーション力を向上させるためのヒントにもなりそうです。