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サテライト展示 浅野文庫所蔵資料紹介「広島絵図」

カテゴリー:中央図書館
記事分類:イベント公開日:2023年3月10日

中央図書館の特別コレクション「浅野文庫」に所蔵している資料を紹介するサテライト展示を行います。
今回は、広島城下を描いた絵図「広島絵図(元和五年御入国之砌御城下絵図(げんなごねんごにゅうごくのみぎりごじょうかえず))」を紹介します。
「広島絵図(元和五年御入国之砌御城下絵図)」の複製資料や、関連する図書資料を展示しますので、この機会にぜひご覧ください。

期間

令和5年3月8日(水)~5月14日(日)

  • 期間中の休館日:
    月曜日、3月22日(水)、3月31日(金)、5月2日(火)、5月9日(火)
  • 期間中の開館時間:
    火~金...9:00~19:00
    土・日・祝日...9:00~17:00
会場

中央図書館 2階 サテライト(北側)

展示の様子

展示の様子

展示内容
  1. 広島絵図(元和五年御入国之砌御城下絵図)について

広島絵図

「広島絵図(元和五年御入国之砌(みぎり)御城下絵図)」は広島城下町の絵図で、大きさは縦136.5cm、横142.1cmです。

これまで「元和五年御入国之砌御城下絵図」のタイトルで、元和5年(1619年)に浅野長晟(ながあきら)が広島に入国した時点の広島城下絵図として紹介されてきました。

しかし、絵図にはこのタイトルの記載が無く、記載された絵や文字の内容から、描かれた景観は正保2年(1645年)以降明暦3年(1657年)の大火以前頃のものであると指摘されています。そのため現在では、絵図中に記載されている「広島絵図」を主なタイトルとしています。

作成年は景観年代よりも当然後のことと推測されますが、紙質等から遅くとも17世紀中頃には作成されていたと考えられています。

資料保存の観点から、皆様に原資料を間近でご覧いただくことは難しいですが、「広島市立図書館貴重資料アーカイブ」ではいつでも誰でもインターネットを通じて見ることができるようになりました。この機会に、ぜひアクセスしてみてください。

なお、今回展示した複製資料は、デジタルアーカイブに公開している画像を元に原資料とほぼ同じサイズで作成しています。

  1. 絵図に描かれているもの

川を青色、堀を紺色、石垣を山吹色、寺を茶色、町屋を黄色、山や木を深緑色で表しています。図中の書き込みのうち、堀の幅と深さは金泥で記されています。

山は明星院(みょうじょういん)山(二葉山の旧名)と比治山が描かれ、山の高さと本丸までの距離が記載されています。川には川幅が記載されていますが、川名の記載はありません。城郭部分は縦横の間(けん)数を記して大小天守の立面図を描き、門・櫓の配置を正確に描いています。城下は町名を記載し、通りの長さを丹念に記載しています。侍屋敷については記載が無く、屋敷割や居住者の情報はありません。書き込みの大多数は幅や距離に関するものといえます。

このような注記内容が「正保(しょうほう)城絵図」のうち「安芸国広島城所絵図」と類似しており、関連がある可能性が指摘されていますが、絵図には成立に関する注記がなく、現時点では詳細不明です。

景観年代について、『広島城絵図集成』(広島城/編 広島城 2013年)には、「寛永16年(1639)の東大工町(現稲荷町)・西大工町(現堺町・榎町)・竹屋町(現三川町・富士見町付近)の町割り後であることは確実で、古川が描かれていないことから正保2年(1645)以降、袋町がないことから明暦3年(1657)の大火以前頃と考えられる。」と記載されています。
※ 古川:京橋川から分岐し、明星院山の傍を南東に流れていた川。正保2年(1645年)春に埋め立てられました。

広島絵図

「広島絵図(番号入り)」[PDF:606KB]
「広島絵図に記載のある町名一覧」[PDF:686KB]
※ 図中の番号は、東大工町が59番、西大工町が7番、竹屋町が48番です。

【参考】
間(けん)、丈(じょう)は長さの単位で、一間は約1.82m、一丈は約3.03mです。
町(ちょう)は距離の単位で、一町は約109m(60間)です。絵図鑑賞の参考にしてください。
(参考:『日本国語大辞典』(第2版 小学館 2000~2002年))

  1. 「安芸国広島城所絵図」について

「安芸国広島城所絵図」は、「正保城絵図」のうちの1枚です。「正保城絵図」は、正保元年(1644年)に、幕府が諸藩に命じて作成させた城絵図です。全国の大名から提出された絵図は江戸城の紅葉山(もみじやま)文庫に収められました。明治維新前後に大半が散逸しましたが、現在63枚が国立公文書館に所蔵されています。

絵図作成の目的は、幕府が全国の大名の居城の防備体制を把握するためといわれ、城内の各曲輪(くるわ)の大きさ、塁壁上の長さ、石垣、土塁の高さ、塀の高さ、瓦塀か板塀か、堀の深さ・広さなど城中の軍事機密に属する数値や、城下町を囲む堀の広さ・深さ、城の周囲の高所との関係、道幅の間(けん)数までを申告させました。

広島藩では正保2年(1645年)から編輯が開始され、正保3年(1646年)に幕府に提出されました。「安芸国広島城所絵図」を見ると、天守や櫓・門・塀の立面が屋根の形状、破風(はふ)(屋根の切妻についている合掌形の板)の位置にいたるまで正確に描かれ、堀の幅と深さ、城内の区画、城下の通りの長さが注記されているのが分かります。

  1. 「広島絵図」と「安芸国広島城所絵図」を比較する

「安芸国広島城所絵図」と比較すると、「広島絵図」は全体的な陸地の形状と描かれている範囲、城下東側の水路の描写がやや異なり、大小天守以外の櫓・門・石垣の立面図が省略されています。「安芸国広島城所絵図」に書かれていなかった町名が記される一方、書かれていた川名が書かれていません。

堀の幅・深さ、通りの長さ、川幅等の数値、明星院山・比治山の高さと本丸からの距離は同じものが記されています。

このほかにも、デジタルアーカイブで見てみると気づきがあるかもしれません。皆様も絵図観賞を楽しんでみてください。

  1. 関連本

(1) 展示した本

  • 『広島の歴史をたどるまち歩きマップ 浅野氏広島城入城400年』〔改訂版〕 広島市経済観光局観光政策部/〔編〕 広島市経済観光局 2019年
  • 『すぐわかる日本の城 歴史・建築・土木・城下町』 広島大学文化財学研究室/編 東京美術 2009年
  • 『グラフひろしま No.44 特集・市制100周年・築城400年』 広島市市長室広報課/編 広島市市長室広報課 1987年
  • 『ひろしま地歴ウォーク』 広島地理教育研究会/編 空の下おもてなし工房 2018年
  • 『資料解説書『広島城』 企画展「広島城大解剖」』 広島城/〔編〕 広島城 2016年
  • 『よみがえる日本の城 7』 学習研究社 2004年


(2) 参考にした本

  • 『ふらっと♭ 広島城下絵屏風 資料解説書』 広島城/編 広島城 2016年
  • 『日本歴史地名大系 35 広島県の地名』 平凡社/編 平凡社 1982年
  • 『角川日本地名大辞典 34 広島県』 「角川日本地名大辞典」編纂委員会/編 角川書店 1987年
  • 『広島城下町絵図集成』 広島市立中央図書館/編 広島市立中央図書館 1990年
  • 『広島城絵図集成』 広島城/編 広島城 2013年
  • 『史跡広島城跡資料集成 第1巻』 広島市教育委員会/編 広島市教育委員会 1989年
  • 『図説正保城絵図 秘蔵城絵図一挙公開!』 千田 嘉博/編集・執筆 新人物往来社 2001年
  • 『鳥瞰イラストでよみがえる日本の名城』 西ケ谷 恭弘/編著 荻原 一青/画 世界文化社 2011年
主催

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