・・・・ ヴエラムか か ダーソンは、その方へチラと眼をやったが、長い廊下の端の窓越しに、東の空が薄蒼くあけてゆくのが見えた。 * 『まあ。』と、旅館の主人は、口籠るように言った。『あなた方は、今夜はほかのお部屋へお泊りがいいでしょう。―ダブル・ベッドのあるね。』 イェンゼンにしてもアンダーソンにしても、この忠告に反対ではなかった。彼等は、ああした経験をした上では、二人いっしょで部屋を探がそうという気持になっていた。二人はその晩入用な物を集めるため部屋へはいった時も、おたがいに連れ立って、一人は灯あ火りをもつ役をするという工合だった。彼等は、彼等の部屋である第十二号室と第十四号室には、窓が三つあることを確認したのだった。 つぎの朝、同じ連中は、再び第十二号室に集まった。旅館の主人は、当然、外部の助力を乞うことを避けたがっていたが、そうは言っても、この家のあの部分の不可思議は、一掃しなければないことだった。そこで、あの二人の下男に、大工の仕事をやらせることにした。作り直しもできない位いに沢山の厚板をこわして家具は取りのけられ、第十四号室にもっとも近接している、あの部分の床ゆが剥がされた。 読者は、この話の筋から当然、ここで一箇の骸骨が発見されて―その骸骨があのニコラス・フランケン博士のであると想像するだろう。ところがそうでなかった。床板をささえている梁の間から彼等が発見したものは、銅の小函だった。その中から、きれいにたたまれた犢皮紙の記録があらわれた。二十行ばかりなにか書かれている。アンダーソンもイェンゼンも(彼が古文書学者のなにかであることがわかったが)、この発見にはいたく興奮した。これはあの異常な現象に解決の鍵を与えるものと思われた。 *― 132 ―
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